筋膜性疼痛症候群とは?
筋膜性疼痛症候群(きんまくせい とうつうしょうこうぐん)とは、体の筋肉に時に激しい疼痛を生じるものです。
この症状が発生する可能性がある筋肉は全身の筋肉です。
原因やメカニズムはある程度解明されていますが、結合組織(筋肉、腱、靭帯、筋膜)が寒冷刺激やストレス、虚血(血流不足)や反復動作による疲労、過度の使用が原因でコリ(異常硬結)が起こり痛みや痺れを引き起こす症状です。
その痛みや痺れは悪化すると広範囲に及ぶこともあります。
現代医学では筋肉の緊張(コリ)が原因で痛みや痺れが出るという理解が進んでおらず、血液検査、MRI、コンピュータ断層撮影など、通常の西洋医学で行われる検査では目に見える根拠がでない事が多々あり、認知がまだ少ないです。
例えば変形性膝関節症で考えてみます。
変形性膝関節症は、老化や肥満、外傷など様々な負担により、膝の軟骨がすり減ったり変形したりすることが原因で膝痛を生じる疾患です。
女性では50歳代以上の肥満気味の方、男性では60歳代以上の方に多くみられます。中高年になって「膝が痛くなる病気」の代表ともいえます。
変形性膝関節症は通常、膝の上の骨である大腿骨と、下の骨である脛骨の間に多く起こります。
症状が進むと痛みが強くなるだけでなく、関節はさらに変形し、硬くなって曲げ伸ばしに支障をきたします。
階段の昇り降りは勿論、平地歩行でも痛みを感じることがあります。
痛みは安静にしていると軽減しますが、痛みを治療しないでいると徐々に変形が進行し痛みも増していきます。
治療は電気をかけたり、ヒアルロン酸の注射をしたりしながら対症療法を行い、痛みがひどくなったり、一定の年齢に達すると手術をすすめることもあります。
また膝関節に掛かる負担を減らす目的で、大腿四頭筋(太ももの筋肉)を鍛える運動を勧めることがあります。
加齢により正常な方でも軟骨は磨り減り始めます。軟骨の擦り減りは、白髪になったり皮膚にしわが出来たりするのと同様に、正常な老化ともいえます。
例えば、一般人を対象にした調査によると60歳以上では女性の約40%、男性では20%に変形が見られます。80歳代では女性は60%以上、男性は50%近くです。
しかし、そのうち痛みなどの自覚症状がある方は20%程度です。つまり変形していても痛くない方はたくさんいるのです。
すり減っていてもあまり痛くないのは、すり減りが軽いためと考えるかもしれません。しかし、すり減って変形がかなり進行していてもあまり痛みを訴えない方がいる一方で、軽い変形でも強い痛みを感じることがあるのです。
このことからも、
軟骨の擦り減りと患者さんの症状が一致しないことはおわかりいただけるでしょう。
患者さんは、たまたま膝が痛くてレントゲンを撮ったら軟骨がすり減っていたために、それが痛みの原因と診断されたのでしょう。
しかし、実は痛くなる前から軟骨はすり減っていた可能性もあるのです。
そもそも軟骨がすり減って変形していることが痛みの原因であれば、それを治さない限り痛みは良くならないことになります。
つまり手術以外には治らないということになります。しかし手術をすれば完全に良くなるという保証はありません。
なかには手術をしても痛みが改善しなかった、手術をしない方がよかったという声も聞かれます。手術はあくまでも治療の最終手段です。
できるだけ保存療法(手術以外の治療方法)を最大限に行うことが重要です。
当院の考え方は関節の周りを支持している結合組織(筋肉、腱、靭帯、筋膜)、血液循環などの変異から起こる異常硬結(コリ)からの原因により痛みが発生していると考えます。
(もちろんそれだけでない痛みもありますが)
関節には結合組織が付着していますので、これらの結合組織(筋肉、腱、靭帯、筋膜)のコリ(異常硬結)を取り除くことで痛みを取り除くことができます。
日本ではまだ筋膜性疼痛症候群という病気自体はあまり知られておらず、「筋痛症」と呼ばれることがあります。
病院での物理療法や投薬、注射でなかなか改善の見られない人は痛みの原因そのものが違うかもしれませんので是非、悩まずに相談してください。
次回は筋膜リリースについてお話したいと思います。