
「股関節がカクンと外れる感じがする」
「歩いていると股関節がうまくはまっていない感じがある」
このような感覚を抱えている方は、股関節の適合性の低下が関係している可能性があります。
整骨院にはこうした股関節の違和感・つまり感で来院される方が多く、その背景には「臼蓋形成不全」や「腸腰筋の過緊張」など、構造的・機能的な要因が複雑に絡んでいることがあります。
本記事では、股関節のはまりの悪さ”の原因、注意点、セルフケア、当院での対応方法について、専門的な視点でわかりやすくお伝えします。
目次
股関節の“はまりが悪い”とは?解剖学的な視点から

股関節の構造と適合性
股関節は、骨盤側の「臼蓋(きゅうがい)」と、太もも側の「大腿骨頭(だいたいこっとう)」が組み合わさった、ボール&ソケット型の関節です。
正常であれば、大腿骨頭が臼蓋にしっかりと収まり、動きの中でも安定した関節運動が可能です。
しかし、以下のような要因で股関節の適合性が低下すると、「はまりが悪い」「ズレる」「カクンとなる」といった感覚が出やすくなります。
はまりが悪くなる原因|主な3つの要素

① 臼蓋形成不全(骨のかぶりが浅い)
日本人女性に多い先天的な特徴で、臼蓋の発達が不十分なため大腿骨頭を十分に覆えていない状態です。
この場合、股関節が不安定になりやすく、はまりの悪さやすり減り(変形性股関節症)へと進行するリスクも高まります。
② インナーマッスル(腸腰筋・中殿筋)の機能低下
股関節を安定させる筋肉の代表が、腸腰筋(ちょうようきん)と中殿筋(ちゅうでんきん)です。
これらが弱まると、大腿骨頭の位置を適切にキープできず、関節が“浮いたような”状態になり、カクンとした動きや不安定感が出ます。
③ 骨盤の歪み・姿勢不良
長時間の座り姿勢や、脚を組むクセ、反り腰・猫背といった不良姿勢も、骨盤と股関節のアライメント(並び)を崩し、はまりを悪くする一因となります。
よくある症状とその背景“なんとなく気になる”を放置しないために

「股関節が外れるような感覚がする」
これは、関節の不安定性が背景にあることが多く、特に「臼蓋形成不全」や「中殿筋(股関節の外側を支える筋肉)」の機能低下が関係しています。
大腿骨頭が臼蓋にしっかりとはまっていない状態では、股関節に荷重がかかったときや動作の切り替え時に、“ズルッ”と滑るような違和感を感じやすくなります。
「抜けそう」「引っかかる」「すぐ戻るけど気になる」といった症状があれば、一度専門的な評価を受けることをおすすめします。
「カクンとなるけど痛くない」
この症状は、スナッピングヒップ(弾発股)と呼ばれる状態である可能性があります。
股関節の周囲を通る腱(特に腸脛靭帯や腸腰筋の腱)が、骨の出っ張りを“引っかかってからパチンと外れる”ように滑ることで、「カクン」「コキッ」といった音や動きを感じるのが特徴です。
痛みを伴わないことも多く、放っておかれることが多いですが、股関節のアライメント不良や筋膜の滑走障害が背景にある場合、将来的な炎症や運動障害の原因になることもあります。
「股関節が詰まる感じがある」
この「詰まり感」は、腸腰筋の過緊張や関節包の柔軟性低下、あるいは股関節インピンジメント(FAI)の初期症状であることもあります。
特に、膝を胸に近づけたときや椅子から立ち上がるときに、股関節の前方に“引っかかる”ような感覚や抵抗感がある場合は注意が必要です。
腸腰筋が固まると、大腿骨頭を前方に引っ張る力が強くなり、臼蓋との接触が増えて詰まりやすくなります。
放置すると可動域制限や慢性化する痛みに繋がるケースもあります。
それぞれの症状は、まだ痛みが強く出ていない「初期段階」であっても、体からの大事なサインです。
「まだ大丈夫」と思わず、早期の評価とアプローチが予防・改善のカギになります。
臼蓋形成不全の方が気をつけたい動作・習慣|日常の何気ないクセが悪化の原因に

臼蓋形成不全は、股関節の受け皿である「臼蓋(きゅうがい)」が浅く、大腿骨頭(太ももの骨の先端)を十分に包み込めない先天的な構造です。
そのため、股関節の支持性(関節の安定を保つ力)が低く、体重がかかるたびに関節へのストレスがかかりやすくなっています。
この状態で負担のかかる動作を繰り返すと、関節唇や軟骨をすり減らし、将来的に変形性股関節症へと進行するリスクが高まります。
以下では、臼蓋形成不全の方が特に注意したい動作・運動・座り方を解説します。
やってはいけない動作・運動
① 深くしゃがみこむ動作(スクワット・床の雑巾がけなど)
股関節を深く曲げると、大腿骨頭が臼蓋に強く当たりやすく、前方や側方に圧力が集中します。
その結果、「詰まり感」や「引っかかり」、「股関節前面の痛み」が出やすくなります。
② 長時間のあぐら・正座
骨盤が後ろに倒れ、股関節の位置がずれやすくなる座り方です。
さらに、あぐらは股関節を外旋・外転方向にひねるため、臼蓋のカバーのない方向に体重がかかってしまい、不安定さが増します。
③ 急なジャンプ・ランニングなどの衝撃運動
臼蓋のかぶりが浅い方は、股関節への衝撃吸収能力が低いため、反復動作で関節がすり減りやすい傾向があります。
運動をする場合は、ジャンプやダッシュなどの高負荷のものは避け、関節に優しい運動(例:水中ウォーキング、エアロバイクなど)を選びましょう。
臼蓋形成不全の方におすすめの座り方

日常生活で座る時間が長い方は、座り方を見直すことが、股関節への負担を減らす大きなポイントになります。
骨盤を立てて、坐骨で座る
骨盤が後傾(うしろに倒れる)すると、大腿骨頭が臼蓋の前方に押し出されるような状態になります。
しっかりと骨盤を立てて、坐骨(お尻の骨)で座ることを意識しましょう。
椅子の高さを調整して股関節を深く曲げない
椅子が低すぎると、自然と股関節が深く曲がり、臼蓋との圧が強くなります。
理想は、股関節・膝関節ともに90度程度になる高さです。
足裏が床にしっかりつくことも重要です。
クッションを使って軽く前傾をサポート
骨盤が立ちやすいように、座面に薄めのクッションを敷いたり、前傾角度のある骨盤サポートクッションを使うのも効果的です。
姿勢が自然に保てることで、股関節への負担を減らせます。
臼蓋形成不全の方は、何気ない動作や姿勢が股関節にじわじわとダメージを与える原因になります。
深くしゃがむ、あぐらをかく、低い椅子で丸くなるような座り方は避け、股関節の構造に合った動作や姿勢を意識することが非常に大切です。
違和感や軽度の痛みの段階であれば、整骨院でのアプローチで進行を防ぐことも十分可能です。
「まだ大丈夫かな」と思っている方こそ、今から対策を始めてみませんか?
セルフチェック|あなたの股関節、詰まっていませんか?

股関節つまり感の簡単チェック法
- 仰向けに寝て、片膝を胸に引き寄せる
- もう片方の脚をまっすぐ伸ばす
- 股関節の前側に“詰まり”や“引っかかり”があれば注意
このような症状があれば、腸腰筋の緊張や骨盤の前傾などが影響している可能性があります。
腸腰筋が固まる原因と対処法
固くなる主な原因
- 長時間座りっぱなしのデスクワーク
- 運動不足
- 腹圧が低く、姿勢を保てない
腸腰筋は、骨盤と腰椎、太ももをつなぐ重要な深層筋で、固まると腰痛・股関節痛・つまり感を引き起こします。
やさしくほぐすおすすめエクササイズ(痛みが増ようなら中止です。)
- ランジストレッチ(腰を反らないよう注意)
- ドローイン+骨盤の前後運動
- ストレッチポールでの筋膜リリース
当院でのアプローチ “関節の安定性”を取り戻す

当院では、単に筋肉を緩めるだけでなく、以下のような総合的な評価とアプローチで改善を目指します。
施術内容
- 骨盤・股関節アライメントの調整
- 筋膜リリース(腸腰筋・大腿筋膜張筋・中殿筋)
- 安定性を高める運動療法(インナーマッスル強化)
筋膜・筋膜リリースを知りたい方はこちらを参考にしてください。
こんな方におすすめ
- 痛みはないが、股関節が「ズレる」「外れそう」な方
- 臼蓋形成不全と診断されたが、まだ手術はしたくない方
- 運動をしていると違和感があり、集中できない方
まとめ “違和感のうち”にケアするのが賢い選択です
股関節の「はまりが悪い」という感覚は、関節の不安定性や機能低下のサインです。
痛みが出る前に、正しく評価し、適切な施術やエクササイズを受けることで、将来的な変形や手術のリスクを回避できます。
「病院に行くほどじゃないけど、なんか気になる」
そんな方こそ、整骨院での早期チェックとケアをおすすめします。