
「最近、歩くときに違和感がある」
「将来、手術になってしまうのでは?」
変形性股関節症に悩む女性の多くが、日々の痛みや将来への不安を抱えています。
特に女性に多くみられるこの疾患は、早期の気づきと対処がカギとなります。
この記事では、変形性股関節症について、以下の4つの視点から詳しく解説します。
- 変形性股関節症の男女比とその理由
- 歩行の具体的な特徴
- 絶対に知っておきたいやってはいけないこと
- 「どうしたら治る?」という疑問と治療の方向性
- 見逃してはいけない末期症状のサイン
同じ悩みを抱える方々のヒントになるよう、わかりやすくまとめました。
ぜひご活用ください。
目次
変形性股関節症の男女比とは?女性に多いのはなぜ?

変形性股関節症は、圧倒的に女性に多い疾患として知られています。
実際に来院される患者さんの多くも女性で、「どうして女性に多いの?」「自分だけじゃないの?」という声をよく耳にします。
ここでは、男女比の実態とその理由について、データと身体の構造面から解説していきます。
変形性股関節症の患者数と男女比の実際のデータ
厚生労働省や整形外科学会の報告によると、変形性股関節症の患者の約80〜90%が女性とされています。
これは非常に高い割合で、他の整形疾患と比較しても性差が顕著な病気です。
さらに、潜在的な予備軍(関節が狭くなっているが無症状の人)も含めると、40歳以上の女性の10人に1人が股関節に異常を抱えているというデータもあります。
この数字は、単なる「老化」や「使いすぎ」では説明できないほどの差です。
女性に多い理由① 骨盤や関節の構造的な違い
女性の骨盤は、妊娠・出産に対応するために横に広く・浅い形をしています。
この構造は、股関節にかかる荷重の角度(力のかかり方)を不安定にしやすいのが特徴です。
また、股関節のくぼみ(寛骨臼)が浅い女性が多く、股関節が「はまりきらず不安定」な状態になりやすいため、関節に負担がかかりやすくなります。
その結果、軟骨のすり減りや変形が進行しやすく、痛みや歩行障害が生じやすくなるのです。
女性に多い理由② 出産やホルモンの影響
もうひとつ見逃せないのが、女性ホルモンと出産の影響です。
妊娠・出産期に分泌される「リラキシン」というホルモンは、関節や靭帯を柔らかくする作用があります。
この影響で、股関節周囲の靭帯や筋肉が緩み、関節が不安定になることがあります。
また、閉経後には女性ホルモン(エストロゲン)の減少により、骨や軟骨の代謝バランスが崩れやすくなるため、変形が進行しやすくなるのです。
このように、変形性股関節症は男女比の面でも女性に圧倒的に多い疾患であり、
その背景には骨格・ホルモン・ライフステージの違いが深く関わっています。
「私だけじゃない」と知ることは、安心につながります。
そして、自分の身体を理解することが、症状悪化を防ぐ第一歩になります。
変形性股関節症の歩行の特徴とは?

足を引きずる「跛行(はこう)」が見られる
進行により、足を引きずるような歩き方になることがあります。
これは「跛行(はこう)」と呼ばれ、痛みを避けようと体重をかけないようにするためです。
重心のズレとバランス低下
骨盤の傾きや筋力の偏りによって、左右非対称の歩行パターンになります。
その結果、腰や膝への負担も増え、痛みが連鎖する悪循環が起こります。
変形性股関節症でやってはいけないこととは?

痛みを我慢して動き続ける
「動かさないと余計に悪くなる」と思って無理に歩き続けるのは危険です。
関節への過負荷が、かえって進行を早めることもあります。
脚を組む・深くしゃがむ・あぐらをかく
これらの姿勢は股関節に過剰なねじれや圧力を加えるため、なるべく避けましょう。
特に床生活が多い方は、椅子中心の生活への切り替えがおすすめです。
変形性股関節症はどうしたら治るか?

正しい姿勢・筋バランスの再教育
痛みを取るだけでなく、根本的に悪化を防ぐには姿勢・動作の見直しが不可欠です。
当院では、個々の状態に合わせて「使いすぎ」「使わなさすぎ」の筋肉を調整し、
無理のない動き方へ導くサポートを行います。
運動療法と生活習慣の改善がカギ
- 骨盤周囲や体幹のインナーマッスル強化
- ストレッチによる柔軟性の確保
- 日常動作(座り方・歩き方・階段昇降など)の再学習
これらを通じて、手術に頼らずにQOL(日常生活動作)を高めることも可能です。
変形性股関節症の末期症状とは?

安静時や夜間にも痛みが出る
通常は動かしたときに痛みますが、末期になると安静時でも痛むようになります。
特に夜間の痛みで眠れないなどは、進行のサインです。
日常生活の制限が顕著に
- 歩行距離が極端に短くなる
- 階段が困難になる
- 靴下や下着が履けないほどの可動域制限
このような状態では、人工関節の検討も視野に入ります。
ですが、整体術やリハビリをすることによって痛みの軽減もしくは維持することで、手術を回避することもできます。
変形性股関節症の歩行の特徴とは?歩き方からわかる関節の負担

変形性股関節症では、進行に応じて歩行パターンに明確な変化が現れます。
この「歩き方の崩れ」は、股関節そのものだけでなく、腰・膝・足関節への二次的な負担を生み出す大きな要因となります。
ここでは、臨床でよくみられる歩行障害の特徴をバイオメカニクス(身体運動力学)の視点で解説していきます。
トレンデレンブルグ歩行 ― 中殿筋機能の低下による骨盤の左右揺れ
変形性股関節症で特に顕著なのが、立脚期(足を地面につけて体重を支える時)の不安定さです。
これは、中殿筋という股関節外転筋の弱化によって起こることが多く、反対側の骨盤が下がる「トレンデレンブルグ歩行」が典型です。
見られる特徴:
- 片脚立ちで骨盤が左右に揺れる
- 上半身が患側(痛い方)に傾く
- 一見すると“フラフラした歩き方”に見える
この歩行パターンは、股関節周囲の筋力バランスの崩れを意味しており、進行予測にも重要な所見です。
関節可動域の制限による代償運動 ― 腰椎や膝への負担増大
関節の軟骨がすり減り、股関節の屈曲・伸展・回旋などの可動域が制限されてくると、
本来、股関節が担うべき動作を腰や膝で代償するようになります。
代償的にみられる例:
- 前方への脚の振り出しが小さくなる
- 骨盤をねじって歩幅を稼ぐ
- 膝を外側に開く“がに股”のような歩行
これにより、腰椎の過伸展(反り腰)や膝関節へのねじれストレスが加わり、新たな痛みや障害の原因となることも。
歩行速度の低下と“痛みの予測回避動作”
慢性的な痛みがある場合、人は無意識のうちに「次に痛くなりそうな動作」を避けるようになります。
この心理的・神経学的な影響により、以下のような動作抑制型歩行がみられます。
- 歩幅が極端に小さくなる
- 地面に足を置くときに慎重になり過ぎる
- 歩行全体のリズムが失われる
こうしたパターンは筋肉の活動量の低下と結びつきやすく、筋萎縮・関節拘縮の悪循環を引き起こします。
当院で行う歩行再教育のポイント
整骨院では、以下のような視点から歩行の評価と再教育を行います。
- 骨盤・股関節の左右バランスの評価
- 中殿筋・腸腰筋など局所筋の機能回復トレーニング
- 荷重移動(重心のかけ方)の指導
- 足部から全身への動作連鎖の改善
適切なアプローチを行うことで、手術を回避できるケースも少なくありません。
このように、変形性股関節症における歩行の特徴は、単なる痛みの表れにとどまらず、全身の運動機能の乱れを反映しています。
痛みが強くなる前に、自分の歩き方を「専門家の視点でチェック」してもらうことが、根本改善への第一歩です。